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御挨拶

コンピュータとネットワークが社会の隅々にまで浸透した21世紀の情報化社会において、全ての市民が豊かな社会を享受できるためには、この二つの技術を深く理解することが市民に求められます。先進国で小学校からのプログラミング教育が始まったことは、このような社会的背景のもとに生まれたことだと思います。

しかし、日本ではプログラミング教育を特殊なものとして軽視し、プロフェッショナルの教育においてすら、基礎となる Computer Science の教育を殆ど行なわないという特異な国です。2020年から小学校でプログラミング教育を行なうことが決まりましたが、どのように教えたらよいのか、問題は山積みです。

こうした日本の状況は、互いの間で共通の文化を共有し、その上で豊かなコミュニケーションを行なうという効率的な村社会の構造から来たものだと思います。

しかし、情報化の進展は同時に、異なる文化背景の人達と一緒に暮らす国際化も進行させていきます。

コミュニケーションの在り方について、考え直す必要があります。

研究所の名前にある協創は、私が慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」の支援を受けて行った授業「コラボレイティブマネジメント型情報教育」が終了後に、これを発展させて行った授業名「協創型ソフトウェア開発」からとったものです。この授業が「コラマネ」と略称されていたことから、研究所の略称を「コラクリ」とすることとし、英語の研究所名を”Research Institute of Collaborative and Creative Information Space”とすることにしました。

当面の研究内容は、プログラミング教育とともに、国際化にともなって必要となる日本語教育、言語を介さずに行なえるコミュニケーションを対象とする芸術教育を扱うつもりです。この3つの教育のいずれにおいても日本では、コミニケーションの表現であるシンボル表現と、シンボルが示す意味の関係が粗略になり、伝達効率を重視してシンボル操作の技術教育に特化してしまっているという問題が見られます。また、このように共通の性質を引出して物事の本質を見つけだす「抽象化」にも焦点をあてていきたいと思います。

研究は、面白いことでなければ意味がありませんが、それと同時に結果が社会に還元されることが必要です。長期的な還元を目指す基礎研究も重要ですが、まずは日本の社会が必要とする情報化、国際化への対応という短期的な課題を解決することを通じて、そこで必要となる基礎研究の方向性も見出していきたいと考えています。皆様の御理解と御支援をお願いいたします。

協創型情報空間研究所 代表理事 大岩 元(慶應義塾大学 名誉教授)

大岩  元(おおいわ はじめ)プロフィール
大岩 元1965 年東大理学部物理学科卒.
1971年 理学博士.東大理学部助手,1978年 豊橋技術科学大学講師,同 助教授,同 教授,1992年 慶応大学環境情報学部教授.2008年 慶應義塾大学名誉教授.同年 帝京平成大学現代ライフ学部教授,2011年 相愛大学音楽学部音楽マネジメント学科教授(2013年まで).情報教育学,ソフトウェア工学,認知工学の研究に従事.所属学会:情報処理学会(フェロー),CIEC(Council for Improvement of Education through Computers),日本ソフトウェア科学会,電子情報通信学会,教育システム情報学会,日本教育工学会,日本オペレーションズリサーチ学会,人工知能学会.研究業績:趙微細加工装置の電子光学系の設計理論,キー入力訓練法の開発,日本語入力方式の開発,KJ法支援,都市景観設計支援,ソフトウェア技術者育成法の開発,情報教育の理念と方法.